副院長の森豊和です。11月3日は北勢病院創立60周年記念講演会でした。
お越しいただいた皆様、お忙しい中ありがとうございました。
「手話と私」というテーマの講演では、桂福團治師匠が出会った人々について、温かく優しい視点で語られ、大変興味深く拝聴しました。精神科医の神田橋條治の著書にもありましたが、何らかの芸に秀でた方のお話は、精神療法、カウンセリングに通じるものが多く、とても勉強になります。
写真は当院、若松医師による講演の模様です。
分子生物学の最新の知見を示しながら、環境が脳の発達そのものに影響を与え、精神疾患に大きな影響を及ぼす。心理教育や作業療法など他者との関わりも大きな意味で環境の一部だから、薬物同様に重要であることを話されていたのが印象に残りました。
地域の皆様のご理解、ご協力があってこそ、当院も成り立っています。
今後ともよろしくお願いします。
こちらは先月の話ですが、津新町に講演を聴きに行きました。
うつ病、不安症と胃腸疾患、アルコール依存症の合併について。
三重大学精神科の岡田教授、森本メンタルクリニックの森本先生が座長をされ、谷井久志先生(現在は保健管理センターの教授に就任)がうつ病、不安症と胃腸疾患の関係について。久里浜医療センターの副院長、松下幸生先生がアルコール依存症とうつ病、不安症について話されました。
先述の若松医師の講演内容にも通じますが、体調を崩せば心も悪くなる。心が悪くなれば体調も崩す、いわゆる心身相関は、昨今、科学的に証明されつつあります。
アルコール依存症とうつ病、不安症についても、近年の脳機能の研究において、発症メカニズムの類似や相互関係が指摘されています。
飲酒をやめたらうつ病も軽快することがあります。お酒をやめて脳や肝臓の働きが正常になってくれば精神状態も改善するのです。勿論うつとアルコール依存症がそれぞれ別々に存在することもあります。
腸の状態が悪くなるとだるくて疲れやすくなる。動くのがおっくうで臥床がち。ますます便秘がちになります。
というのも腸管は腸内細菌と多数のリンパ装置がある免疫臓器です。腸管内で多数のサイトカイン(微小なホルモン)が行き交い、脳と腸の間でクロストーク(情報伝達)がおこなわれています。そのため胃腸が悪いと気持ちも沈む。また気持ちが沈むと胃腸の調子も悪くなります。
うつ病、不安症を治療する上で、日々のお通じ、おなかを動かすための運動習慣も大切。昔から言われている、受け継がれていることは理にかなっていることが多いです。それこそアルコールの危険性は古事記にあるスサノオのヤマタノオロチ退治から言われていますよね。新しい研究成果、治療指針とともに、古くからの養生訓、先人の知恵も大切だとつくづく感じます。
ここから少し別の話。
久しぶりに津新町の商店街を歩いたのですが、ピアサポートみえの建物や、誰でも使える学習用のフリースペースなどを見つけました。
ピアサポートみえの看板、クリストファー・リーブ(スーパーマン役の俳優)の話が書かれているのを見つけ、村上龍の短編「ハワイアン・ラプソディ」を思い出しました。脊髄損傷で飛べなくなったスーパーマンが母星に帰ろうと努力する話。
それはともかく親しみやすいこんな看板を見たら、入ってみようという気になりそうです。街中に、自然な感じで、子どもはもちろん住民が自由に使える場所、受け入れてもらえる場所があるのは素敵だと思います。
最後に本日の1曲。
欧米のロック、ヒップホップからレゲエ、ラテン等のワールドミュージックを昇華したうえで日本の伝統的な歌唱をのせたシンガーソングライター折坂悠太さん。
宇多田ヒカルが最近のお気に入りに上げるなど、じわじわ話題になっている彼が先日リリースしたアルバム「平成」から「さみしさ」。
折坂悠太 - さびしさ on YouTube
折坂悠太 「平成」Album Streaming on Spotify
「全ての人に、寂しさや様々な感情があって、自分なりの居場所を求めている。それを邪魔することは誰にもできない」
こういったことが、アルバム全体のテーマだと、彼はインタビューで語っています。
詳細はインタビューに詳しいですが、彼は大きな社会問題について極限まで考え、最終的に自分にとって一番大切なことを純粋な形で絞り出し歌っているように思います。
大きな理想を、安全な場所から他人事のように唱えるのではなく、あくまで当事者の視点、自分自身の問題として歌っているからこそ、この歌は強い訴求性があり、普遍的であり、独りよがりではない表現になっているのだと思います。
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